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Rainy Valentine

〇〇にはあなたの名前を入れてね🤗


先輩「あいつなら、もう帰ったんじゃないか?」
私「ええっ!?」
先輩「たぶん…カバンがないしな」

そんな…、 メールの既読がつかなかったから、部室で何か作業をしているんだと思い込んでいた。

先輩「俺も今から帰るところだけど、岳に用があったのか?」
私「はい…」

先輩はちら、と私の持つ紙袋に目を向けた。

先輩「そういう事か… 呼び戻すか?」
私「い…いえ!大丈夫です!雨の中わざわざ戻ってもらうのも」
先輩「そうか…残念だったな、○○さん」

せっかくのバレンタインなのにと、先輩は眉を下げた。

私(そうだよ…今日渡せなかったら、意味がない………。)

包装された袋の中身は、紛れもなく本命の彼へのもの。
鎧塚先輩のために、この日にかけて丹念に準備した手作りのチョコレートガナッシュだ。
先輩は私を気遣いながら帰ったが、私はそのまま一人部室に残ることにした。


いつもなら出入りの多いこの部室もしん、としていて、 1人だとやたら広く感じる。
ざあざあと降り続く雨の音が、静かな部屋に響いた。
このまま帰るのが正しいんだと思うけど… もしかしたら、という望みが消えない。

… … 雨が激しくなったような気がする。
それに段々と日も落ちてきて、外は薄暗さを増すばかりだ。
今日、渡したかった…

けど。

(…いつまでもここにいても仕方ないよね…。

そう思い、立ち上がろうとした時。
ガラッと扉が開く音がした。