Rainy Valentine
先輩「あいつならさっき帰ったよ」
わたし「ええ!?」
先輩「多分な。カバンねえし」
最悪だ。一縷の望みが消えてしまった。
いつもなら、部室に最後まで残っているはずなのに…。
先輩「オレももう帰るところだけど。どうしたの?岳に用事だったのか?」
わたし「はい…」
先輩「呼び戻すか」
わたし「だ、大丈夫です!戻ってくるの大変ですし…」
先輩「だなあ。アンラッキーだよ。せっかくのバレンタインなのになあ。この大雨じゃ…」
わたし「(そうだよ…バレンタインなのに…今日渡せなかったら意味ない…) 」
この丹念に包装されたものは、紛れもなく本命チョコ。
鎧塚先輩のために用意したチョコレートなのだ。
…
残っていた先輩も帰り、一人きりになった部室。
ざあざあと雨の打ち付ける音が響く。
(はあ…いつまでもここに残ってても意味ないよね。
メールして、明日渡すしかない… 悲しい。)
そう思っていると、ガラ、と扉を開ける音がした。
鎧塚「…ん? お前…」
わたし「え…先輩!? どうして、もう帰ったんじゃ…」
鎧塚「いや?外に置いてる車を移動させてただけだ」
わたし「な、なんだ…!(帰ったわけじゃなかったのね)」
鎧塚「お前はどうして残ってるんだ?」
わたし「私は…その…」
鎧塚「?」
わたし「鎧塚先輩に用事があるんです。
あの…っこれ受け取ってください!」