Rainy Valentine
鎧塚「○○。いたか」
私「せ、先輩!? もう帰ったんじゃ…」
鎧塚「いや。用事でまだ大学にいたんだが… 廊下で西依とばったり会ってな。
お前がオレを待ってるって聞いたから戻ってきたんだ。」
私「な、なんだ…! 」
(帰ったわけじゃなかったのね…良かった!ありがとう西依先輩ーー)
鎧塚「俺に何かーー」
気がついたように携帯を見やる先輩。
鎧塚「悪い…電波が届いてなかったみたいだ。今連絡に気づいた」
私「い、いいえ!それは大丈夫です。それより…」
私「えっと…その…」
私は、握りしめていた袋を見つめた。
私「鎧塚先輩に…渡したいものがあって…」
思い切って先輩に袋を差し出す。
私「あの、これ… 受け取ってください!」
鎧塚「…これは…チョコレートか?」
私「はい…」
鎧塚「…」
二人の間に、しばしの沈黙が流れる。
去年は皆に配る形だったのに、今年は先輩だけ別で用意した。
今まで後輩だと思ってた人間にこんなことをされて、先輩は困るかもしれない。
(真面目な先輩を困らせたくないけど…でも。)
私「あ、あの…日頃の感謝、っていうのもありますけど…」
握った手に力が籠る。
私「実は、これ…ほんめい、なんです…」
「……」